車を降り、口付けた土気色の頬が無言のうちに私を罵倒する。
<中略>
一番愛した優しいあなたが、いまや私の死を心の片隅で密かに願っている。
彼の思い通り死んでしまえればいいのだが、そうもいかず途方に暮れる。
成す術の無い私は骨の椅子に座りまだ消えてくれぬ恋慕に幾度と無く打ちのめされる。
日中、果てしなく水色の廊下にふと彼の幻影が現れるともうその日は何処を辿って帰ったか憶えていない。
放課後の乾いた理科室で硝子の底を覗いている。Präparatがぱりと音を立てて割れる。
何かを待っていたのだろうか。紛うことなきあなたが居ない世界。此処が底だ。
<中略>
漸く、という気持ちでステレオスコープの月を眺めながら閨に入る。
眠れるものか…と思うのだがやがて透き通った夢の気配を掴む。
落ちていく日中、仄かな思い出、薄っぺらい官能。
それらは目に見えぬ無数の空気になって
今の私という名の亡霊にささやかな希望を持たせようと夜、
階段を登って足元を冷やしていくのだ。
<2003年17歳頃 ノートより一部抜粋>
vanish
...
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2010-06-04
